bgBottom

第1話【広田】

[2012/01/18]

TRIPLANEの連載がリニューアル!

メンバー4人がリレー形式で小説を書いていくというこの企画。第1話は広田周(Dr)がつづります。

 

=============================================

 

東京の2月の朝は寒い。

北海道生まれの人でも、とても寒く感じてしまうが北海道の旭川の寒さはこんなもんじゃない。

空気が身体に刺さるような痛さがある。

 

この時期になると、どうしても生まれ育った旭川の事を思いだし、あの時の事を思いだしてしまう。

あの時は幸せだった思うようになって数年、、、

 

 

まだ俺は彼女と付き合っている。

 

時間が経過して行くほど彼女への愛情は薄れて行くが、別れたいとは思わないし、むしろ結婚まで考えている自分がいる、、。

 

 

 

~~12年前の4月~~

北海道は雪が溶け始め、路肩に車の粉塵まみれの真っ黒になった雪とは思えない塊が残っているだけ、一つ一つの景色や匂いが北海道特有の春を感じさせる。

 

21歳になったばかりの”優輝”は春は嫌いではない。外の気温も暖かくなり、気持ちをリフレッシュでき新しい出会いも増える時期であるからである。

 

 

優輝は至って普通の大学生である。小学生の時から極端な優等生でもなく劣等生でもなく、成績も常に平均的で、友人も少なくない。

誰に対しても人当たりが良く嫌われないが、悪く言えばあんまり目立ちもしないしパッとしない。

 

市内の普通の中学に進学し、高校も平均より少し上の公立高校に合格し、大学受験も現役で市内の私立大学に合格している。

 

何の夢もなく、まだ働きたくもないから大学まで進学した典型的な未来の自分の人生を創造出来ないタイプの若者であった。

 

 

大学のサークルも友達を少しでも増やして大学生活を楽しみたいだけで、名ばかりのテニスサークルに入り、テニスの活動など週に2日程度で、あとは暇さえあればサークルの仲間と飲み歩く生活をしていた。

 

優輝は春休みも終わり大学3年生になり、また新たな気持ちで大学に通い始めたばかりの新学期5日目の水曜日。

 

優輝の人生が変わる出会いが訪れた。

 

 

 

大学生になってから毎週水曜日は1限目から必ず授業があり、3年生になってもそれは変わらなかった。

 

実家住まいの優輝は家の目の前のバス停から7時45分出発のバスを使い通学しなくては9時からの授業には間に合わない。

 

この前の日もサークルの1番の友人”康太”と遅い時間まで飲んでいたので、

ぎりぎりに起きて間一髪でバスに乗り込んだ。

 

そして、脇目も振らずに1年間同じ席に座っていた1番後ろの左の席に座ろうとすると、一人の女性が座っている。

 

優輝はボソッと

「ちっ、そこは俺の席なのに、、、」

 

バスが動き出して、冷静になって周りを見渡すと立っている人はいないが、席はほぼ埋まっていた。

 

心の中で

「去年はこんなに混んでなかったのに、、」

 

と思いながら、まだ少しお酒が残っているし、1時間もバスで立っているのはきついと思い、その女性の横に座る事にした。

 

 

「隣いいですか!?」

 

女性が

 

「どうぞ。」

 

 

その時にチラッと顔が正面から見え一瞬目があった。

優輝は驚いた。こんな事は初めてだからだ。

 

心の中で

「なんだ可愛いな。こんな子には初めて会ったかも。」

 

 

 

と思いながら女性に

 

「すいません。」

 

と言って隣に座った。

 

 

優輝は中学から人当たりが良いので女の子とも普通に仲が良く告白される事も何回かあり、決してモテないタイプではなかったが、

いざ恋愛となると奥手で、告白されたら急にその子の事が気になり、話す事も出来ず上手く行く事はなく、21歳まで特定の女性と恋愛に発展する事は無かった。

 

 

横に座ったのは良いが女性の事が気になり、いつもなら大学に着くまでの時間は寝ているのに一睡も出来ない。

 

女性はもちろん隣の男の事なんて一切気にせずに座っている。

 

気にしているのは優輝だけ。

 

気付いたらもう大学のバス停の前に着いてしまい、顔を見ずに会釈だけしてその席から離れバスから降りた。

 

 

優輝は大学に着くとすぐに親友である康太に

バスの中の出来事を話した。

すると康太は、簡単に

 

「それって一目惚れじゃないの!?」

 

「そんなに簡単に一目惚れなんかするのか!?っていうか俺は一目惚れした事なんてないし」

と、優輝は答えるが

 

康太は得意気に

「お前が気になってバスで寝れなかった事が何よりの証拠だよ。また会えるなら会いたいと思ってるだろう!?」

 

「まぁ思ってるけど、今だけだろう。しかも、もう会うことはないだろうし、、、。」

 

と、優輝は自分に言い聞かせるように康太に話した。

 

 

しかし、その後の授業でもサークル活動でも目が一瞬合った事が忘れられなかった。

 

パッチリとした目の奥に真っ黒な透き通った瞳があり、肩に届くか届かないか位のセミロングで艶やかな黒髪がそれを更に引き立ててるようにさえ感じてしまった。

 

 

数日経てば直ぐに何も想わなくなるだろうと思っていたが、、、

 

数日経っても何故か頭から離れない。

 

康太の

「一目惚れなんじゃないの!?」

 

という言葉が何回も頭をよぎってしまう。

 

 

優輝は一人になる度に呪文のように

 

「忘れよう。忘れよう。どうせもう会う事はない」

 

と、言い聞かせてた。

 

 

だが何度も言い聞かせても忘れる事が出来ず、ついに一週間が経ち水曜日の朝を迎えた。

いつもなら一限目がある前の日でも気にせずに飲みに行くが、一週間の自分の高鳴る気持ちが本当なのかを確かめたいだけで、会えるかどうかすらも分からない7時45分のバスに優輝は確実に乗りたかった。

 

 

6時半には目を覚まし、7時には朝食を済ましてると

優輝の母が

 

「今日は珍しく早起きだね。何かあるのかい!?」

 

優輝は面倒くさそうに

「別に何もねえよ。」

 

母親の勘は鋭いもので、優輝の行動に敏感に察していた。

 

ただ、優輝の頭の中はそれどころじゃない、

 

母が察している事など露知らず

 

「朝からうるさいな」

 

としか思ってなかった。

 

そんな母とやり取りしている間に朝食を食べ終えて、7時25分には家を出た。

 

 

そして、バス停に着くと優輝は腕に付けているお気に入りのスウォッチを見て、

 

「35分か!! よし、まだバスは来てないな」

 

まずは一安心して、呼吸を整えていた。

 

 

もし、万が一彼女が乗っていたら

 

「一言だけでもいいから話しかけてみよう。」

 

「せめて名前だけでも聞いてみよう。」

 

「いや、いきなり名前は失礼だから、どこの学校か聞いてみよう。」

 

「その前に学生なのか!?」

 

など、頭の中で話し掛けるシミュレーションを念入りにしている間に、

 

45分になった。

 

だが、バスが到着しない。

 

何回もスウォッチに目を向けて時間を確認するが時間は一秒一秒規則正しく動くだけ、

たったの一秒が妙に長く感じる。

 

1分、、

 

2分、、、、経っても

 

来ない。

 

この間、スウォッチに何十回、目を向けたか解らない。

 

 

そして、到着予定時間から3分経った時、

100メートル先のカーブからバスが曲がって来るのが見えた。

 

すると、急に緊張感が高まり心臓の鼓動が激しくなり、手が震えだしてきた。

 

「落ち着け落ち着け」

 

と、何度も何度も言い聞かせるようにすると、逆に鼓動はより激しくなり手の震えも全く止まらない。

 

 

あっという間にバスが自分の前で止まった。

 

前方の扉が開き心臓の鼓動は一層に激しさを増したが、息を大きく吸い込んで少しでも落ち着かせて、ゆっくりとバスに乗り込み、

勝手に自分の特等席と思っている一番後方の席に向かって歩き出した。

 

周りを見渡すと一週間前と同じ、

 

立っている人はいないが席はほぼ埋まってる。

 

が、優輝は後方の席にまだ目を向けれない。

 

そしてバスが動き出して、後方の席に近づいた時に優輝はついに左側の席にチラッと目を向けてみると、

 

次へ 1 2 3

コメント投稿

  • 投稿者:neeeeeeeeさん(2012年1月18日|1:41 PM) 

  • つづきが超気になる。。。。

  • 投稿者:chirorinさん(2012年1月25日|11:25 PM) 

  • 学生の時の 恋する ドキドキ感や ワクワク感。
    ときめくハート・・・
    思い出します。
    この後の 展開が とても 楽しみです☆

  • L R
  • コメント投稿は会員限定です。会員の方はログインをお願いします。

    まだ登録がお済でない方はこちらから→ 無料登録

  • L R
bgBottom

pick up

  • おすすめ紹介
  • あなたがおすすめするバンドやアーティストを当サイトで紹介しませんか?
  • おすすめ投稿する
bgBottom

bgTop

bgBottom