[2009/12/09]
勝手にしやがれの飯島誓(B.Sax)とBloodest Saxophoneの甲田伸太郎(T.Sax)が自身のイベントでプレイするために結成したTHE SAX NIGHT。当初6人でスタートしたのがいつの間にか10人編成まで膨れ上がったバンドの変遷にも現れているように、バンドは常に「カッコいいこと」や「面白いこと」に対して肯定的であり、ムダ話や脱線さえも彼らの前では創作の重要な種となる。正に意識しない粋がそのプレイや奏でられる音符の隅々にまで浸透しているわけだが、最新の3rdアルバム『ロックンロールオーケストラ誕生!』でも、ロマンティックで、気分がよくて、背筋がしゃんとしていて、かつ悪っぽい音楽は、粋という名の痛快さを感じさせてやまない。さらに今回は壮大なストーリーが鍵になっており、タイトルや歌詞世界とそこに鳴っている音楽をすり合わせていくと、ドラマティックな世界は人物や情景をリアルに立ち上げていく。そんな五感を刺激する音楽の主に話を聞いたのだが、脱線好きなバンドよろしく、思わぬところへと話は展開していった。
―― 2006年3月に開催されたイベント『the SAX-NIGHT vol.1』がTHE SAX NIGHTの結成のきっかけだったとのことですが。
甲田伸太郎「そうですね。僕と飯島(誓)君が色んなところでDJをやる機会があって、「何かお互いに一緒にやろうよ」という話をしていたんですよ。でも2人でDJイベントをやるだけでは弱い感じがして、「何か目玉を」と考えていたんですけど、(THE SAX NIGHT結成までは)凄く遠回りしたよね(笑)。時には料理とかにも脱線しつつ、「だったらバンドやればいいじゃん!」と知っている人達に電話して、集まったような感じだったんですけど、2人の中で『絶対カッコよくなる』という勝算はありました。で、2006年の3月3日にそのイベントでライヴをやったところ、物凄く好評だったんですよ。そんなこんなでゆるゆると始まっていったんですけど、2007年に入ると、何を思ったか飯島先生がメンバーをどんどん増やし始めて……僕がスタジオのドアを開けると、なぜか知らない人がいるんです(笑)。それが数回続いて、いつの間にか大所帯のバンドになっていましたね」
―― “ロックンロールオーケストラ”というコンセプトは最初からありきな感じで?
甲田「実は後づけです(笑)。最初にあったのは『8ビートのちょっと悪なやつを憎たらしくやろう』というかなり漠然としたテーマで、“ロックンロールオーケストラ”ってついたのは2007年の終り頃だよね」
飯島「最近です」
甲田「(メンバーが)増えていって、2007年も押迫った頃、『曲も増えてきたし、来年は(本腰入れて)やるか』という話になったんですよ。そのあたりですね、“ロックンロールオーケストラ”というタイトルがついたのは。俺も知らなかったんですけど(笑)。また飯島さんのご乱心で」
飯島「誰かが言い出したんですよね。“ロックンロールオーケストラ”って」
甲田「その“ロックンロールオーケストラ”がかなり定着した頃に、俺は聞かされたんですけど。でも前に聞いていた可能性があるから『これ何?』とは言えないところもあって(笑)。で、ミーティングの時に誰かが『“ロックンロールオーケストラ”ってジャンルを限定するのはどうなの?』と言われた時に、なぜか反骨心から『いいんだよ。明日になったら“ユーロビートオーケストラ”になっているかもしれないじゃん、(要は)ノリだよノリ』と逆に説得する側に回り、完全に知っていることになってしまったんですけど、実はこの話を飯島君にするのって初めてなんです(笑)。公共の場を借りてちょっとした告白を」
―― とは言え、“ロックンロールオーケストラ”というコンセプトが固まったからこそ、2008年の2枚のアルバム(1st『ロックンロールオーケストラ登場!!』、2nd『衝撃のロックンロールオーケストラ』)が生まれたのではないでしょうか。
甲田「1stで“ロックンロールオーケストラ”とガッツリ叫んでいたり、確かにワードとして“ロックンロールオーケストラ”を武器にしている部分は今でもあります。ただアルバムまでのプロセスについて言うと、最初はイベント『the SAX-NIGHT』でしかプレイしないバンドとして動いていたんですけど、2007年の中頃になると、色んなイベントに出てくれというオファーが来るようになって、コロっと『いいよ』と出たのが2007年の終り頃で、そこでつい『来年はガンガンやってやる』と言ってしまったんですよ。そこからレコーディングが始まり、メンバー全体の決意も『一丁派手にやるか』と固まり、ライヴの本数も増え、と同時に曲も増え、『出来たものを形にしていこう』という流れの中からアルバムが生まれていきました」
―― 今回のアルバム『ロックンロールオーケストラ誕生』にも共通していますが、作品には一貫して“夜”とか“海”とか“ハイウェイ”といったキーワードが浮かんできます。実際、聴きながらそれらのキーワードが醸し出す景色も見えてくるのですが、作品作りの中でイメージに関する話し合いを持たれたりするのですか。
甲田「凄くムダ話が多いんですよ。そういうムダ話の中から『それいいね』と拾っていったり、曲のタイトルでも誰かがつけた「~ビーチ」や「ハイウェイ~」というものに対して皆が(イメージを)どんどん被せたり、またそのワードで各メンバーが世界観を広げていったりというのはありましたね」
―― 『ロックンロールオーケストラ誕生!』を制作するにあたって、過去2枚のアルバムとの差別化みたいなところは意識されたのですか?
甲田「割と繋がっているんですよね。2nd(アルバム)であるストーリーがありまして、THE SAX NIGHTというバンド自体を『昔そんなバンドがいたんだよ』と昔話にすることでドラマティックになるではというところから広げていったんですけど、それに対しての第1話的なのが今回のアルバムというわけです。どうして2ndのような物語になったかということに対する過去のお話ですね」
―― だからアルバムの冒頭で「A long long time ago,THE SAX NIGHT」と語られるわけですね。
甲田「そうですね。まだ表立って出していない部分も多いんですけど、ちゃんとしたストーリー自体は出来上がっていて、それに沿ってかいつまんだ部分がアルバムの中に散りばめられています。取り敢えず(全)8話あるんですけど、今後は2話ずつネットで公開していくつもりです(現在公開継続中)。ストーリーの中に今回収録されている曲のタイトルや詞の世界が散りばめられているのが見えてくると思うので、(ストーリーと併せて聴いてもらえると)より今回の3rdアルバムの世界が広がるんじゃないかと思います」
―― 大きなストーリーは2ndアルバムを作る時に見えていたのですか。
甲田「2ndを作る時はアルバムに乗せている部分しかなかったんですよ。当時はそのストーリーに執着するつもりもなかったんですけど、色々考えていくうちに、(次作は)ストーリーを繋げていこうということになりました。2ndが2138年に暮らしているジョニーちゃんという男の子が2008年から来たTHE SAX NIGHTというバンドにさらわれてロックンロールを体験し最後に車の鍵を渡されて……という話だったんですけど、それが何でなのかというところを今回創作した感じです」
―― 今回は2nd時よりもストーリーを意識しながらプレイしていたのでしょうか。
甲田「そうでもないよね」
飯島「ストーリーよりも曲が早かったですから」
甲田「曲だったり、飯島君が作ってくる詞の世界だったり、皆で話している時のタイトルの付け方だったり、あと先程もお話したバカ話だったりというのが全部融合されてストーリーが肉付けされていく感じでした。だから収録されている曲やアルバム自体がドラマティックになればいいなと思いながら作っていましたね」
―― アルバムには随所でインタールードが挿入されていますが、インタルードを節目に新たなストーリーが開けていく感じだったりするのですか。
甲田「そうですね。曲を並べていく段階ではストーリーが見えていたので、曲とストーリーの両方が引き立つようなバランスで並べていきましたから」
飯島「今回はストーリーありきだった分、前回と比べて曲を並べていくこと自体は苦労しましたね」
甲田「何度もミーティングしたよね。なんせムダ話が長いですから(笑)」
―― その脱線を重ねた上にまた戻ってくるというのがTHE SAX NIGHTの創作のあり方のように思えます。
甲田「基本的に皆が曲を作ってくるんですけどロマンティストが多いんですよ」
―― 意外ですね。
甲田「ポジティヴなロマンティストというかストリートのロマンティストというか、なんでもいいんですけど(笑)、皆色んな曲を持ってくるんですよ。『こんな曲をやったら面白いんじゃないの』というのを皆が持ってきて、俺らがピックアップするんですけど、否定することがないんです。『取り敢えず全部やってやれ』スタイルなんで、結果的に膨大な曲数になるんですけど、その中からいい曲だったり、『ここに入れるんだったらこういう曲』というものだったり、『何が足りないんだろう』というものを当てはめていきながらまとめていきます」
飯島「どんなに脱線しても最終的にはまとまるんです。基本的に2人が考えていることが近い分、ブレないので、脱線したままにはなりませんね」
甲田「たまに脱線して戻らないこともあるんですけど(笑)。スカを作ってこられた時は驚いたけどね(笑)。それでも『一回やってみよう』とライヴでやったりするんですよ」
―― 今のお話を聞いていると、バンドの集団制をキープしながら、各々が一歩前に出る機会も伺いつつ、でも最終的には何事もなかったようにバンド・サウンドが鳴らされる……演奏の雰囲気にも通じるものを感じました。
甲田「大人数になって自分達のイベント以外のところでもライヴをやるようになった頃っていうのが、皆「オレが、オレが」という感じだったんですけど、段々と整理されてきて自分のポジションみたいなものが出来てきて、(バンド・サウンドが)どんどんシェイプアップされたというのは実感しています」
―― そんなライヴで培ったものをレコーディングへ持ち込んでいる感じなのですね。
甲田「そうですね。一発録りなんで、くじけずにやり通す。ノリ重視ですから。例えば、スローな曲やバラードであってもグルーヴがあった方がいいので、バンドの一体感みたいな部分は大切にしていきたいですね」
―― レコーディングもテイク数も重ねることなく。
甲田「これ、1日で録ったんですよ。2ndの時も1日だったんですけど、前回出来たということで飯島先生が味をしめてしまって(笑)」
飯島「なんとかなりましたね。30本、40本と一緒にツアーをしている分、結論は固まっているので、何を言っても大丈夫だろと(笑)」
甲田「時にはツアー先でスタジオに入ったりもしたもんね。ライヴが終わって、移動して、その先でスタジオに入って、曲作りをして固めて、で、宿に帰って飲んで……という繰り返し(笑)。でもウチらはライヴ終わって、『よし飲み行こうぜ』というのはそんなにないですよね。終わったら、飲む人は飲む人で部屋に集まってという感じなんですけど、割と僕らはすぐに寝てしまうので、終りは早いです。まあ、ストイックというのとは違うんですけど、あくまでもライヴをやりに行っているので……と言っている割には飲むか」
飯島「はい(笑)」
甲田「でも今年に入ってからのツアーは羽目を外さなくなりましたね」
飯島「移動も含めて1週間24時間ずっと一緒ですからね」
甲田「車で北海道から九州まで行ったもんね。札幌からずっと来て、函館から青森まではフェリーに乗って、で、青森から東京へ帰ってきて、12時間ぐらい家に戻って、またその夜から九州へ行くという感じで」
―― その移動の光景も含め、THE SAX NIGHTは皆がバンドをやり始めた頃の気持ちを抱いて活動しているように窺えます。
甲田「それはありますね。(バンドをやっている)一番の理由が、話すこと話すことが通じるところにあるんですよね。『なんかほら分かるじゃん』という部分を共有出来る楽しさとか、年齢が離れているというところも楽しかったりしますね」
―― では『ロックンロールオーケストラ誕生!』を携えてのツアーで企んでいることは?
甲田「行くところ行くところ、単純に楽しんでもらえたらいいですね。とにかく色んな人を巻き込みたいなと。最初は寄せ集めの、如何にもバカバカしい、ロマンティックなロックンロールオーケストラという集団を見て欲しいです」
飯島「1年前に観てくれた人にとっても、よりパワーアップしている姿を見せられると思いますよ」
インタビュー:安部薫
(関連リンク)
(リリース情報)

NFCD-27194
ロックンロールオーケストラ誕生!
『THE ROCK’N'ROLL ORCHESTRA IN “BLUES”』
【価格】2,625円(税込)
【収録曲】
1. ブルーズ
2. 星空・デッド・フルテンション
3. ZERO
4. BUZZ TRIP A GO GO
5. BIG BONES -2162 より愛を込めて-
6. MACHINE XXX
7. さらば、オーシャン
8. SCHOOL DAYS
9. さよなら、WASTING TIME
10. BIG BONES -2007 アンダーグラウンドより愛を込めて-
11. 弾丸ビーチ
12. 流星・バッド・ディステンション
13. 星屑のハイウェイ
14. BIG BONES -2038、愛を込めて-
15. LADY THE NIGHT
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